コラム — シリーズ第3回

Google Workspaceだけで
医療DXは完結するか?

2026年5月|医療法人おひさま会 DX推進室

結論:8割は完結する。残り2割に工夫がいる

おひさま会の51システムは、100%がGoogle Workspace(GWS)を基盤にしている。AWSもAzureも使っていない。専用サーバーも契約していない。

「本当にそれだけで医療DXができるのか?」と聞かれることが多い。答えは「8割はGWSだけで完結する。残り2割は、GWSの上にGoやPythonを載せれば解決できる」だ。

GWSだけでできること

Google Workspaceエコシステム
GWSの強みは「すでに全員のPCに入っている」こと。追加導入の手間がゼロ。ライセンス費用も既存の契約に含まれている。
GWSの機能医療DXでの使い方追加コスト
Google Apps Script自動化の心臓部。問い合わせ管理・保険証AI判別・レポート生成0円
Google Chat全社通知・アラート・ステータス管理の統一窓口0円
Google DriveFAX PDF保管・書類配信・患者データ管理0円
Spreadsheetマスターデータ管理・ダッシュボード・ログ記録0円
Gmail書類の自動配信・エラー通知0円
追加コスト合計:月額0円。GWS Business Standardのライセンス(月額約1,500円/人)は既に業務で使っているため、DX用の追加費用は発生しない。

GWSだけでは足りないこと

ただし、すべてがGWSで完結するわけではない。2つの壁がある。

壁① GASの実行時間制限(6分/30分)

GASには1回の実行が最大6分(トリガー実行は30分)という制限がある。数百枚のFAXを一括処理したり、数千件の患者データを同期するには足りない。

解決策:Go言語で常駐プログラムを作る。院内のPCやサーバーで動かせば、実行時間の制限はない。GWSのAPIを叩いてSpreadsheetやDriveと連携するので、GWSエコシステムからは外れない。

壁② 電子カルテの操作自動化

電子カルテはブラウザベースで動いていても、APIが公開されていないことが多い。GASからは操作できない。

解決策:GoやPythonのブラウザ自動化ツールを使う。人間がブラウザで操作する動きを、プログラムで再現する。

注意:電子カルテのブラウザ自動化は、ベンダーのサポート対象外になることが多い。「自己責任で、慎重に」が原則。壊れても元に戻せる設計にしておくことが必須。

「GWS + α」の構成パターン

レイヤー技術役割
基盤Google Workspace認証・通知・ファイル管理・データ保管
自動化エンジンGAS(TypeScript)定期実行・Webhook・Web UI
重い処理Go常駐プログラム大量データ処理・24時間監視・EXE配布
AIGemini API書類分類・文字起こし・要約
データ統合PostgreSQL患者ID統合ハブ(次回コラムで詳述)

ポイントは、どの層もGWSを中心に据えていること。Go常駐プログラムもGWSのAPIで結果をSpreadsheetに書き、ChatにアラートをPOSTする。PostgreSQLのデータもGASのWeb UIで閲覧する。バラバラなツールを寄せ集めるのではなく、GWSを「ハブ」にして全部をつなぐ設計だ。

なぜGWS中心にこだわるのか

コストゼロ
理由はシンプルだ。「スタッフ全員が毎日使っているツールだから」。新しいツールを導入すると、それだけで教育コストが発生する。GWSなら、通知がChatに届き、データがSpreadsheetで見え、ファイルがDriveにある。追加の学習コストがゼロ

✅ GWS中心設計の3つのメリット

  1. 追加コストがほぼゼロ — 既存ライセンスの範囲内。AI APIの利用料も月数百円程度
  2. 教育コストがゼロ — 全員が既に使い慣れたUI。新しいツールの操作説明が不要
  3. ベンダーロックインが少ない — データはSpreadsheetやDriveに入っているので、いつでも取り出せる
「最高のツール」より「全員が使えるツール」を選ぶ。中小医療法人のDXでは、この判断が最も重要だ。

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